01.04.16

『模型のホメかた。』

「作ったキットのレビューなんざ普段やってるだろう」と思いきや、いざ自分の趣味を振り返ればとびきりセンセーショナルなことに気がつく見出しだ。
やれ組みやすいだ、やれ可動だ、やれ再現度がどうだ、そういう話はしていないのが本書だ。まして完成品レビューは特集内容に含まれていない。
キットを組んでいない状態で魅力的な写真を撮り、そしてランナーの状態で「このキットはここが良い」と記事を作っている。


ピックアップされるのはキットのパッケージだけではない。
2015年、特に熱い炎に包まれたアジア圏のAFV事情を冷静に、そしてわかりやすく解説している。
『WoT』や『ガルパン』、『艦これ』を例にあげプラモデルシーンの熱意を誌面に書き込んでいる。

どこからどこまでがメジャーでマイナーなのかは、模型問屋か模型店が決めてくれれば結構だが、それとは関係なく目を引く製品を作っているメーカーはある。
ヤマシタホビーやライフィールドモデルなど「メーカーとしては若いが設計技師はベテラン」となるメーカーや、MENGのようにAFV業界に突如吹き荒れたハリケーンのようなキット群も「わかりやすく」解説されている。

ガンプラでもAFVでもエアクラフトでも、金型の流用はよくあることである。
だがメーカーはあえてそれをウリにすることはないし、共通部品を使う意味を事細かに説明することはないが、『ガンダム THE ORIGIN』シリーズで続くジオン系MSの開発系譜に紐付けて流用パーツの是を唱えている。
同じフレームにただ違うパーツを組み合わせているわけではない、ガンプラならではのキャラクターの魅力を持ち上げた良質な構成だ。

キットの構造やメーカーのうんちく話だけが魅力ではないのが、本書だ。
ランナー状態のパーツの写真がとにかく綺麗。そして深い。
モールドの浅さも深さも、ゲートの厚みも伝わるような一枚が所狭しと並び、それを魅せる。

完成した模型を人に見せる手段は様々あり、コンペなり店頭掲示なりインターネットなり様々だ。
中でも自分が好きなのは写真におさめ、インターネットで伝える手段で、それはネットでなくてもいいと考えるが、雑誌の読者投稿ページに出す度胸は無い。
しょせん素人の考えと見立てではあるが、本書の写真は「模型を伝える」ことに長けたキャメラマンが撮影していることは間違いない。被写体のキットの魅力と良し悪しが伝わってくる。

毎月中旬から下旬に発売される模型誌(ホビー誌)では完成品、あるいは作業工程を写した写真とレビューは掲載されているが、ここまで「素材」を持ち上げて楽しく書いてくれた構成はないだろう。
買う、積む、組み立てる、塗る、撮る、自慢する。プラモデルの楽しみ方はそれぞれあったが「組まない状態を見てたのしむ」というアプローチは、個人的にやって酒のつまみにしたり、モデルグラフィックス誌の連載で楽しんだしはしていた。
が、こうして一冊まるごと特集を組まれ、目にしてみるのはプラモデルの新しい楽しみを後押しされる。

キットを完成させた時の快楽は自分自信しか味わえない極上の時間だが、完成させなくても楽しむことができるのも、プラモデルの魅力だ。
本書はそんな「未完成状態の製品をあえて流通させ、ユーザー次第の楽しみ方が千差万別」のプラモデルの楽しみ方の一つを開眼させる良書である。
作る以外の楽しみという、最高の酒のつまみを提供してもらえたようだ。

模型の話をしながら酒を飲む機会があってもいいかもしれない。
それと、プラモデルの評価の仕方、楽しみ方を見直すきっかけになるだろう。
モデラーでも、そうでなくても、一読して損はない、むしろ読んで新しい光を見て欲しい。


by kenji_szmr | 2016-04-01 23:49 | diary


カメラとニッパー


by kenji_szmr

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

その他のKenji_szmr

検索

カテゴリ

全体
diary
photo
toys
防人玩具研究所
ニコル死亡カウンター

記事ランキング

最新の記事

17.04.25
at 2017-04-25 22:56
HGUC Zガンダム(新)
at 2017-04-21 22:48
17.04.12
at 2017-04-12 17:16
17.04.04
at 2017-04-04 23:32
17.04.02
at 2017-04-02 21:26

以前の記事

2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
more...

ファン